ビデオ⑥ 言葉の意味を感じて伝える

読んで楽しくなる方法は?

さあ、ここからは、聞き手に立体的にイメージが湧いてくる、楽しい読み方をご紹介します。
「おむすびころりん」を読みます。

 

『おむすびころりん』

むかし むかし ある ところに、 よい おじいさんと、 よい おばあさんが 

すんでいました。

おじいさんは、 まいあさ はやく おきて、 山へ 木を きりに いきました。

おばあさんは、 いつも おべんとうに、 おいしい おむすびを こしらえて 

あげました。

おじいさんは、 山へ いくと、 せっせと まきを きりました。

ふとい 木は、 おので こんこん きりました。

ほそい えだは、 なたで ちょんちょん きりました。

やがて、 おひるに なると、 おじいさんは、みはらしの よい ところで、

おべんとうを ひらきました。

「あっ、 しまった。」

おむすびを ぽたんと じべたへ おとしました。

おむすびは、 ころころ ころころ ころがって、 あなの 中へ ころっと

おちて しまいました。

 

「おむすびころりん」というタイトルを、立体的に読んでみましょう。
まず、おむすびを目の前にイメージして、そのおむすびが、コロンと転がるさまを思い浮かべて音にするのです。
物の名前と動きでは、音の質が異なります。
「おむすび」の存在が音になり、ころりんという擬音が、軽やかな動きのある音になります。

この読み方だと、タイトルだけでおもしろそうと引きつけられます。
私は以前、手話を習ったことがあるのですが、そんな感じで、今回は手を動かしながら読んでみましょう。

 

「むかしむかし」

さて、日本に住んでいる人にとって、「むかし」とは、どちらの方向でしょうか?
そう、後ろですね。
手話でも、「むかし」は、後ろへ手のひらを動かします。
後ろ後ろ、、、とイメージすると、「むかしむかし」になるのです。

 

「あるところに」

「ところ」に注目で、「ところ」という場所を作ります。
手話では、手のひらを下にむけて指を軽く曲げ、前にトンと置くような動きをします。

 

「よいおじいさんとよいおばあさんが」

おじいさんとおばあさんが立っている場所を設定します。

 

「住んでいました」

手話では、両手を握りこぶしにして肘を鋭角に曲げて垂直に立て、握りこぶしを口元から胸元に下げる動きをします。
この腕の動きに合わせ、すべての言葉の意味を、音で表していくのです。

 

「おじいさんは、毎朝早く起きて」

おじいさんの設定場所を示し、起きる動きを表します。

 

「山へ木を切りに行きました」

「山」はどこにあるのかというと、ずっと向こうです。
ずっと向こうに山をイメージして、自分と山との距離感を表します。
「木を切る」という名詞と動詞を表した後、「行きました」は、ここから山への移動を音で表します。
音の高低をいっぱいつけるとさらに楽しい文章になります。

 

「おばあさんは」

おばあさんの設定場所を示し、

「おべんとうに」

おべんとうの形を立体的に作ります。

 

「おいしいおむすびをこしらえてあげました」

おむすびをにぎっておじいさんに手渡します。

 

「おじいさんは山へ行くと」

おじいさんの設定場所を示し、続いて「山」の場所を表し、
山までの距離感を出しながら「行く」という動詞を声で表します。
一つ一つ、丁寧にやっていきましょう。

 

「せっせとまきを切りました」

切っている動作をイメージしながら言いましょう。

 

「ふとい木は」

「ふとい」という形状をゆっくり低い声で言うことで表します。

 

「おのでこんこん切りました」

重いおのを持って、こーんこーんと力を込めて切る様子を表します。

 

「ほそい枝は」

「ほそい」形状を速め高めの声で表します。

 

「なたでちょんちょん切りました」

軽く速く切る様子を表します。

 

「やがて」

ゆっくり読んで、時間の経過を表します。

 

「お昼になると」

少し景色が変わった印象を表します。

 

「おじいさんは」

おじいさんの設定場所を示します。

 

「みはらしのよい所で」

景色を見るポーズに、さきほどやった手話の「ところ」を加えます。

 

「おべんとうをひらきました」

竹の皮で包まれたおべんとうをイメージし、左右に開く動きをします。
音の高低をいっぱいつけましょう。

 

「あっ、しまった」

まさにセリフ口調で読んでみましょう。

 

「おむすびを」

おむすびを立体的に作ります。

 

「ぽたんと地べたに落としました」

「落ちる」動詞を声で表します。

 

「おむすびは」

おむすびを立体的に言います。

 

「ころころころころころがって」

ころころ転がるイメージです。

 

「あなの中へ」

目の前に穴を作り、その穴へ落ちていく動きを表します。

 

「ころっと落ちてしまいました」

落ちていく動きと、悲しい気持ちを表します。

 

それでは、全文を楽しく読んでみましょう。

『おむすびころりん』

むかし むかし ある ところに、 よい おじいさんと、 よい おばあさんが 

すんでいました。

おじいさんは、 まいあさ はやく おきて、 山へ 木を きりに いきました。

おばあさんは、 いつも おべんとうに、 おいしい おむすびを こしらえて 

あげました。

おじいさんは、 山へ いくと、 せっせと まきを きりました。

ふとい 木は、 おので こんこん きりました。

ほそい えだは、 なたで ちょんちょん きりました。

やがて、 おひるに なると、 おじいさんは、みはらしの よい ところで、

おべんとうを ひらきました。

「あっ、 しまった。」

おむすびを ぽたんと じべたへ おとしました。

おむすびは、 ころころ ころころ ころがって、 あなの 中へ ころっと

おちて しまいました。

 

このように、物(名詞)や動詞、形容詞、距離、時間を言葉にしていくと、読んでいて楽しく、相手にわかりやすく伝わります。
表現は豊かなのに、いつも冷静でいられます。
慌てることもありません。

イメージしたものが、以心伝心で相手に伝わり、さらに音の高低をつけることで読み手の心が動き、その心の動きが印象深く相手に伝わります。
これで絵本はもうバッチリ!

絵本だけではなく、会議でも、プレゼンでも、お客様に何かを説明するときでも、すべての言葉には意味がありますので、その意味を丁寧に音で表現していきましょう。
文章を読むのが苦手・・・という気持ちが、どんどん減っていきます。
難しく見える文章も、あなたにとっても相手にとっても、わかりやすく変身します。
話すテンポも間も、勝手にうまくできるようになります。

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