ビデオ④ 強調 アイロンをかける

聞き取りやすい話のスピードとは

あなたの読むスピードは、速いでしょうか?ゆっくりでしょうか?
人に話を伝える時、話すスピードはとても大事です。
やはり、ゆっくりの方が人によく伝わります。

相手にわかりやすいスピードは、一分間に、漢字・かな・句読点を一文字として数えて、250文字から300文字と言われています。
しかし、ゆっくり伝えようと全体的に言葉を伸ばして話すと、単調になりパワーが落ち、説得力にかけます。
後で説明する「強調」と「間」を使うと、ゆっくり、しかもわかりやすく伝えることができます。

 

ところで、アナウンサーがテレビでニュース原稿を読むスピードは速いです。
なぜならば、テレビには文字や映像などの見える情報があり、しかも何度か同じ内容を聞いている場合が多いので、受け手の頭の中に情報がある程度入っているからです。
しかし、相手がこれから話す内容を全く知らない場合は、話しながら相手の頭の中の状態を察することが必要です。
ゆっくりわかりやすく話すことはもちろん、今の言葉はわかってもらえたかな?違う言葉で言い直したほうがいいかな?など、相手を観察しながら話す心遣いが大切です。

 

この後の文章を、相手に理解してもらうことを念頭に置いて、声に出して読んでみましょう。
1分間でどこまで読めるのか、時計で1分を計りながら読んでみてください。
ぜひ、録音してみてください。

 

「最近の日本人は、早口になってきたと良く言われます。 

世代間や個人差はあるものの、一般的傾向として、一定時間内に話すことばの量は増えてきています。 

また、早口になるにつれて、ことばが乱れてきたという指摘があります。 

その第一は、話が文として完結せず、断片的で、あちこちに飛躍がみられると

いうものです。 

元々会話とはそんなものだという人もありますが、筋道をたてた話し方ができないのは問題です。 

上手な話し手は、「ゆっくり話しているようで、多くの内容を伝えている」と言います。  

「多くのことを話していても、少しもせかせかした感じをあたえない」とも言われます。

人間が一息で話す時間は、長くて普通十秒から十五秒ぐらいです。その範囲内で私たちは一かたまりの意味を伝えています。 

その中で使うことばの数は、個人差があるにせよ、およそ限定されてきます。 

なぜ人によって速度の差が大きくちがってくるのかというと、それは間(ポーズ)のとり方によるのです。

そうした意味で、速度と間には深い関係があります。」

                   ※NHKアナウンス・セミナー 日本放送出版協会より抜粋

 

さて、1分間でどこまで読めましたか?
1分間に250文字~300文字が、相手がわかりやすいスピードです。
下から7行目の『少しもせかせかした』の「た」が、250文字目、次の行の『その範囲』の「囲」が300文字目でした。

ちなみに、2行下の『およそ限定』の「定」が350文字目、その下の行の『それは間(ポーズ)のとり方によるの』の「の」が400文字目でした。

いかがでしたか?
300文字までに入っていたら、読むスピードOKです。
今までチャレンジしていただいた方の中には、1分間でこの文章を読み終えてしまう方もいらっしゃいました。

 

文章を読むとなると、あせって速くなりがちです。
どうすれば、落ち着いてわかりやすく読めるのでしょうか。
「強調」と「間」について、練習していきましょう。

 

強調で言葉を印象深く伝える

ゆっくり読むことにプラスして、どうすれば相手にわかりやすく伝えることができるかをお伝えしましょう。

相手に内容を理解してもらうためには、伝えたい重要な言葉をあわてずゆっくり「強調」して伝えることが大切です。
一つの文章の中に、相手に伝えたい重要な言葉があります。
その言葉を「強調」します。
強調するには、重要な言葉を「ゆっくり」「強め」「高め」で伝えます。
強調することによって、相手は「ああ、ここが重要なんだな」と、すぐにわかります。
とても親切な話し方なのです。

 

先程1分間で読んでいただいた文章の冒頭

「最近の日本人は、早口になってきたと良く言われます。」

の中で、強調したい言葉というと、「早口になってきた」です。

 

では強調のために、イメージしてみてください。
「早口になってきた」という言葉に、上からアイロンをかけてみます。
強調のためのアイテムです。
まず上からアイロンで「早口になってきた」をぐっと押しつけて、次にグーっと伸ばします。
「早口になってきた」は、圧縮されぺったんこになって長く伸びます。

これを音声で表現しますと、「はーやーくーちーにーなっーてーきーたー」となります。
時間で言うなら、2秒で言えるところを、倍の4〜5秒で言います。
念押しするかのように言うイメージです。
粘りがあり、ズシッと重い印象になります。

 

「最近の日本人は、早口になってきたと良く言われます。」

強調を目立たせるために、「早口になってきた」以外の語はさらっと読みます。
そして、「早口になってきた」は、ブレーキをかけたかのようにゆっくりすぎるぐらいゆっくりです。

しかし、ただゆっくり話すだけでは、間延びした印象になります。
息を使わず粘りをつけて言ってみてください。
粘りを加えると、お芝居のセリフをくどく言っているかのような印象になります。
これが、かなり効果があるのです。

 

では、次の文章を読んでみましょう。

「世代間や個人差はあるものの、一般的傾向として、一定時間内に話すことばの量は増えてきています。」

「一定時間内に話すことばの量は」を強調します。
長いです。
ここも文字にアイロンをかけて、ゆっくり粘りをつけ、同じテンポで読みます。

悪い見本が、「一定時間内に話す、ことばの量は」と、途中で切ってしまうことです。
「一定時間内に話す」までは良かったのですが、途中で間を空けると強調が弱まります。
そして、その後の「ことばの量は」は、少し速くなり、また強調が弱まります。
全部同じテンポで間を空けず読むのがコツです。
棒読みのように一直線に読みます。

「いっていじかんないにはなすことばのりょーは」
こんな感じです。

 

一文字ずつ丁寧に読む感じです。
すると、読むのに必死で、意味は全然考えられなくなります。
それでいいのです。
まず練習としては、均一にベターッと読みましょう。
粘りをつけて、ちょっとくさめに読みます。
一本調子で変な感じですが、ここで言葉の意味を伝えようと感情が入ると、息が乱れて強調が弱くなります。

慣れない時は変な感じがしますが、コツをつかめば、堂々と強調できるようになります。
強調を使うことによって、ゆっくり話を伝えることが可能になります。
その上、粘りをつけることで、お腹を使った発声のいい練習にもなります。

 

言葉をもう少し表現したいので音の高低を使います。

自分から30センチ後ろに離れたところのある軸のツマミを上下して、音の高低をつけましょう。(ベーシックの最後の方でお伝えしましたツマミです)

いっていじかんないにはなすことばのりょーは」の「いっていじかん」が高くてそのまま下がり、「ことばのりょ」でまた上がって下がります。

本当は、「いっていじかんないにはなすことばのりょーは」ですが、前にお伝えしたようにあんまり細かく考えず、「いっていじかんないにはなすことばのりょーは」のイメージで大丈夫です。

音の上下とともに「心」も一緒に上下します。
感情は入っていませんが、「心」の上下で言葉が生き生きしてきます。
こうやって読んでいくと、伝えるのがおもしろくなってきます。

このように、一つの文章の中の重要な言葉を見つけ、強調して伝えてみましょう。
重要な言葉にラインを引いたり、まるで囲んだりして、印をつけるとわかりやすいです。

 

では、先程の文章に私が重要かなと思うところにラインを引いたので、ラインのところを強調し、他の部分はさらっと読んでみましょう。

一文ずつ練習しましょう。

最近の日本人は、早口になってきたと良く言われます。 

世代間や個人差はあるものの、一般的傾向として、一定時間内に話すことばの量は増えきています。

また、早口になるにつれて、ことばが乱れてきたという指摘があります。

その第一は、話が文として完結せず断片的であちこちに飛躍がみられるというもので

す。

もともと会話とはそんなものだという人もありますが、筋道をたてた話し方ができない

は問題です。

上手な話し手は、「ゆっくり話しているようで、多くの内容を伝えている」と言います。

「多くのことを話していても、少しもせかせかした感じをあたえない」とも言われます。

 

強調の度合いは、内容によって様々ですが、線を引いた言葉をくどいぐらい強調して読んでみてください。
気をつけて欲しいのは、感情を入れず、冷静に粘りと高低をつけることです。

 

印象に残るプレゼンテーションとは

ラインを引いた重要な言葉は、遅いかな、やりすぎかな、と思うスピードでちょうどいいです。
思う以上にゆっくり読む練習をしてみましょう。
速いより遅く読むほうが難しいです。

情報番組で司会のアナウンサーが、スタジオに用意された背よりも高いボードの文字をゆっくり読み上げているような感じです。
ただ、ゆっくり読むだけではなく、それに付け加えて、「わかりますか?わかりますか?」と相手に念押ししながら伝えているような感覚です。

見た字をしっかりゆっくり伝えます。
これが、堂々と、しかも丁寧に聞こえる方法です。
聞き手は、話し手に自信と余裕を感じます。

慣れるまで大変ですが、このスピードに慣れてくると、焦りがなくなり、落ち着いてきます。
そして、伝わっているなと実感できる話し方になります。
同じ言葉を二度繰り返して伝えることがなくなります。

 

プレゼンの練習のために、トレーニングにお越しになる方も多くいらっしゃいます。
プレゼンでこんな風にゆっくり伝えるとなると、文字数を減らす必要があります。
聞き手の受け取れる情報量はそんなに多くはありません。
聞いた人が「よくわかった!」と思える言葉の量がいいのです。
そのために、文字数を減らし、ご自身にも余裕をもってもらうのが、インパクトのあるいいプレゼンのコツだと思います。

プロジェクターで映す内容も、細かい字をいっぱい並べず、ご覧の方が読める文字数にするのがいいと思います。
言葉も文字も「わからない」と感じさせないように配慮しましょう。
すべてを重くせず軽くする。
背負う荷が減って気分も楽になってきます。
たくさんの資料を作っても、後でじっくり見返す人もそういません。
なので、プレゼンのその瞬間、「そうか、わかった!」と印象に残していただくことが重要なのです。

伝えて、その結果、人を動かすのがプレゼンです。
わからないから、おもしろくない、なので眠たくなるのです。
聴き手の心を動かすプレゼンを目指しましょう。
たくさん伝えた、というのは伝え手の自己満足で、聞き手にとって親切ではありません。
プレゼンは、他の皆さんも内容は素晴らしいので、その中でめだってなんぼ、なのです。
「私の言うことを、聞き逃すなよ」っていう、かっこいいプレゼンをしましょう。
いかに興味を持ってもらえるか、さらに、理解してもらえるかです。
会場の皆さんに「へぇ〜〜!」「ほぉ〜〜!」と、驚いたり笑顔になっていただきましょう。

 

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