ビデオ⑩ 「ペンマイク」

マイクや電話で話すときのアイテム「ペンマイク」

大きな声でトレーニングをしていると、
「先生、いい声にはなったんですが、この大きな声では日常で話せません。どうすれば小さい声で話せますか?」と、質問されることがあります。

息を多く使って声を薄めるように小さくするのではなく、いい声をキープしたまま小さな声で話すことはできます。
そのためには、下腹の力がさらに必要になります。

 

練習をしましょう。
ボールペンを1本ご用意ください。
ボールペンのノックするところに、高性能マイクが仕込んである、とします。
マイクには指向性があり、真上からの音しか拾わないとします。
 ※マイクの指向性とは、マイクがどの方向から音を収音できるかという特性のことです 

 

つまり、マイクの周りに、はみ出た音はムダになる、ということです。
この小さなマイクに、声を入れ込んでいくように話してみましょう。
口から出た音を、点にまとめます。
後ろを意識した声の厚みを持ちながら、エネルギーを高めて音をまとめるという感じです。
こうすることで声の質は変わらないまま、声は小さくなります。

 

しかし、このアイテムを使うときには、注意点があります。
「ペンマイク」に話そうとすると口先に意識が行きます。
なので、後ろに「意識」を置くことがもうしっかりできるようになってからお使いいただくといいと思います。

 

この練習は、息もれがなくなる、音が明瞭になる、そして、電話・マイクで話すときに使える!という大きな利点があります。
仕事場での電話、つい大きな声で話すと、周りの方にとっては迷惑になります。

そこで、音が細い棒状になって確実に受話器に入っていくイメージで話してみましょう。
しっかり内容を使えながえらも、声がまとまっているから周りに声がもれません。

 

次の早口言葉を読んでみましょう。

「笑わば笑えわらわは笑われるいわれはないわい」

 

文字を見た瞬間、え、何が書いてあるの・・・と、とっさに理解できないことに体が勝手に反応して、力が抜けてしまうことがあります。
体の力が抜けると、下腹の力も抜け、息がもれもれの声になってしまいます。
一気に読もうとするのではなく、「ペンマイク」で一文字一文字丁寧に音にしてみましょう。

 

大きい声よりも小さい声のほうが、下腹に力が必要です。
これができると、大きい声も小さい声も質は同じになります。
ささやく声とは、質が違うのです。
「ペンマイク」の小さい声は、音量を下げたというイメージです。

そして、言葉が思うままに作られていく感じがしませんか?
一定の質で、ずっと話すことができます。
気持ちも乱れず、安定しています。
あまり力を使っていないのでラクな気がしますが、下腹の力はかなり使っています。
確実に声を出している感覚です。

 

「ペンマイク」活用法

「ペンマイク」に向けて話すという的(まと)から、他の的(まと)に変えてみます。
相手の耳をめがけて話します。
少し離れたあの人の耳に声を届けるとイメージして「ペンマイク」の声で話してみます。
すると、届くのです。
不思議、不思議。

 

以前トレーニングにお越しになっていた男性の方で、耳の遠いおじさんとご一緒に暮らしていらっしゃる方がいました。

今まででしたら、大きな声で「ごはんだよ」と言ってもなかなか聞こえなかったそうなのですが、「おじさんの耳に入れ!」と思いながら狙いを定めて言うと、これまでより小さな声でも「おう」と、声に反応してくれたそうです。

遠く離れたおじさんの耳に声が届けと思いながら、声を耳に入れるように話す、これだけなのです。

 

お店でも活用できます。
静かなお蕎麦屋さんで、座ったけれどスタッフの方が来てくれない。
といって、この雰囲気の中、大きな声で呼ぶのもなあ。
スタッフは、きっとあの角を曲がった奥の厨房にいるに違いない。

通路をまっすぐ進んで角を右に曲がったところにいるスタッフの耳に届け!と思って「すみませ~ん」と言うと、声は、角を右に曲がってスタッフに届くのです。
それも、うるさくなく。

「お店など人が多いところでは、私の声は掻き消えてしまうんです」とおっしゃる方、使ってみてください。
私は、いつも使っています。

 

小さな声で会話する仕事の方、静かな場所で接客される方、例えば、お医者さん、看護師さん、CAさん、ぜひ、使ってください。
この声、エネルギーが高く、相手にしっかり伝わる声なのです。
あなただけに伝えたい、、、という印象も加わります。
相手の方は、心をこめて言ってくださったと嬉しい気持ちになります。

 

また、この話し方だと、「今」だけに意識が集中しますので、頭の中がシンプルになります。
つい、次のことを考えながら話していたりなんてこともよくあるのですが、それがなくなります。
話し終わるまで、目の前の人のことだけに集中、終わったら、次のこと、というふうに切り替えることができます。
すると、自分の満足度が上がります。
今、ここで充実した時間を過ごしたという満足です。
その満足感が相手に伝わるのです。
熱心な方だなあ、丁寧な方だなあという印象です。

この意識だけで、「一日がせわしなく忙しかった」から、「一日が有意義だった」に変化します。

 

次へ